失語

市井に生まれ、そだち、生活し、老いて死ぬまで

恩師とよきのこと

ファッションや美容とはあまり関係のない話が続きますが。
一旦高校のときの話に戻していいかしら。

インスタで言ったことあったかも。私には圧倒的な恩師と呼べる人間が一人だけいて、その人とは高校で出会いました。
いつも工場の作業着みたいな服を着たおじいちゃん先生(今思えばそんな年じゃなかったかもだが、定年してからの+αみたいな働き方だった気がする)で、数学が担当の”とよき”。

先生の中には、国公立なのに憚らず「ここは他の学校とは違う!頭脳明晰な選ばれし人間たちがいるところですからね」とか「下々の者(他校のこと)と付き合ってると腐りますよ」とか言う偏差値至上主義の過激な人もいたけどとよきは真逆だった。

「お前ら自分がどんだけ頭いいと思ってるか知らねえけどよぉ、調子のんじゃねえ、かわいげってもんがねんだよ」ってよく言ってた。
口が悪かった。

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こんなんだっけ?全然記憶にない

なんでそんな人を恩師と仰ぐようになったかっていうと、
私は本当に数学ができなくて(学問としては好きなでも、いかんせんセンスがない)、テストじゃいつも散々だし、授業中も???ってことばっかりで。
そんな私にとよきも気付いてたんで、まあ授業中、私のことをあてるあてる。

当然全く答えられなくて恥ずかしいし悔しいしで結構つらかった中、「なあ、お前ら、本当に○○(わたし)よりわかってるのか?○○が間違ってくれるからお前らは理解できるようになってるんじゃないか?」って言ってくれたんだよね。

そのときになんていうか、まあ、見せしめにはされてるが、”置いてけぼりを出さずに授業を進める”ことに対しての信念を見た気がして、大げさだけど感動したんだ。

 

そこからは、とよきが好きだし、数学もわかるようになりたいから必死に勉強したし、とにかく質問しに行った。
挙句の果てには”とよきの部屋”って呼ばれてる旧校舎にある謎の和室でみかん食べながら補習してくれたりしてさ。
補習なのに楽しくて仕方なかったな。数学が美しい学問だってわかった。

あるとき、演繹と帰納かなんかのとこで、「先生はこう言ってたけど、私はこの順序で教えてもらったほうがわかりやすかったと思う」って生意気にも意見したことがあって。

笑いながら「○○は、本当はものすごく頭がいいよ。間違うのはまだテクニックが身についてないだけ。数学の本質を深くまできちんと理解してる」って言ってくれたことがあって、脳天を打たれたね。
お世辞や励ましも多少はあったかもしれないけど、それでも震えるくらいうれしかったのを覚えてる。

そんなに良くしてもらってんのに懲りずに2点/100点とかそのあとも取ってんだけど(馬鹿すぎる)、数学は楽しかった。
とよきは数1-3担当だったんで、数A-Cはもっと散々でしたが。

2点の罰として東大の問題集を課せられて、もうそこまで行くと答え自体は見ていいんだよね。採点対象はそこに至る過程だから。
ぜんっぜんわかんないながらも、とにかくクラスメイトの数学バカ(失礼)に聞いたり、その頃は簡単にググるとかもできないから本屋や図書室で立ち読みしてさ。

やっとの思いで完成させて提出したら、ちいさなこけしをもらったよ。
とよきはなぜかこけしが好きでね。

 

風の噂で亡くなったと耳にした。
私もそっちに行ったらバカでかいこけしをプレゼントしようと思う。